東京エレヂィ(出発篇)

時はまさに初冬の薄暮で、すわりの悪いのぞみ号のシートでプチエコノミークラス症候群になりつつあった。
最速の利器は、最良の居住空間まではデザインされていないのだろう。
利得追求の弊害は、わたしのオシリの痺れに現れていた。




大井川を寸秒で渡りきると、夕焼けに冠頂のおしろいを薄紅に染めた富士山が見えた。
暮れ行く灰色と、艶かしい稜線のグラデェーション。
思わず、ガラにも無く、願掛けしちゃいました。
「ビッグトラウトが釣れますように」。ではなく。
「何とか合格させてくださいな」。である。
また帰りの車窓から見えればいいねぇ。

東京の雑踏を人の背中に寄り添うようにして歩を進める。
ただクリスマスジングルがそこここと、聞こえるし、店舗からの無味無臭なラップ音楽やら、ざわめきやら、もうちょっとでゲロ吐きそうになった。
今夜の仮宿は、渋谷道玄坂にしては破格値のビジネスである。
どう贔屓目に見ても都市整備が行き届いていない迷路の中にあって、ネオンの海に乱立するラブホとともに、それは申し訳なさそうなたたずまいであった。
一日をどこで、何時に締め切ろうか・・・
ただただ、時間だけがマッハの速度で過ぎていった。
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